事例紹介:新型コロナ施策の分析

新型コロナウィルスに効果を示す施策の発見に挑戦

Trial Toolを使って各国/地域の施策の効果を分析してみよう

これまでの事例で確認したWide Learning™の要因分析機能を用いて、国/地域の地域特性(以下、本稿では特性と表記します) と実施する様々な施策を分析し、それぞれの特性に対して新型コロナウィルス感染拡大抑制に有効な施策の組み合わせの発見を試みましょう。

この事例記事は、2020年8月時点のデータに基づいて作成しています。


経済活動の振興策で感染者数は拡大する?

2020年の春ごろから、新型コロナウィルスことCOVID-19の感染者が世界中に拡大し、その後も感染者の数は増え続けて、各国/地域の行政は事態の収束を目指して様々な取り組みを行ってきました。

例えば人々の移動や経済活動についても、感染リスクを避けるために制限すべきか、停滞した経済を活性化させるために振興するかが、世界中で議論を呼びました。特にヨーロッパでは、2020年の夏からの感染再拡大に伴う各種制限への反発も多く、引き続き大きな社会問題となりました。

日本でも経済活動振興を目的とした国内移動の支援施策が人々の大きな関心事となり、観光産業などに歓迎されるものの、不安の声を寄せる人々の声もニュースになったことは、皆様もご存じのことと思います。エンターテインメント業界の皆さんやそれらのファンの皆さんの中には、もっと早い制限緩和を望んでいた方もいらっしゃったかもしれません。

同じ施策でも効果の出方が違う地域がある?

ソーシャルディスタンスの維持による感染拡大抑制の施策には、交通機関の閉鎖や外出制限などがあります。 これらの施策が有効に働くか否かは、どうすれば分かるでしょうか。
例えば、同じ外出制限を行った国でも、日本やニュージーランドのようにあまり感染者が増えなかった地域もありますが、アメリカ、インド、ブラジルのように何百万人もの感染者を出した地域もあります。

関係性を掴むのは難しい

これまでの研究でも、アジア地域・ヨーロッパ地域といった「地域区分」や「BCG接種率」、「一人当たりGDP」などが感染拡大に関係しうるとされる要因の候補とされていました。実際には、これらの特性の組み合わせに依存している可能性もありますし、様々な施策を組み合わせて実施することの相互作用も考えられます。

それぞれの特性と施策が、どのように感染拡大の抑制に関係しているのかを確認するのは、簡単なことではなさそうです。

拡大抑制施策の組み合せ


感染拡大の抑制に関係する「特性と施策の重要な組み合わせ」を発見

これらを数十個程度の要因として分析すると、組み合わせの場合の数は2の数十乗通りとなり、この規模になると、コンピュータを使っても処理困難な量になります。
(詳しくはWide Learning™の4つの特徴をご覧ください)

このため、従来の多くの研究では人が予め分析すべき組み合わせ範囲を選び、量を絞り込んで分析を行っています。しかし、この作業のためには深く専門的な知識が必要となりますし、新型コロナウィルスのように未知の問題に対しては、過去の知見がヒントになるとは限らず(※1)、重要なチェック対象を見逃してしまうかもしれません。

Wide Learning™を使えば、膨大なデータから手掛かりを速く見つけられる

Wide Learning™は探索順序の効率化や探索の中間結果の有効活用によって、このような天文学的な分析要因の組み合わせの全体を探索し、高速に重要な組み合わせを発見します。

今回は、各地域の感染者数の拡大率を元に、
「ある地域の特定の期間に感染拡大を抑制できていた (1:POS = Positive) か、否 (0:NEG = Negative) かの情報」を正解ラベルとして、上記施策の実施状況と該当地域の特性情報で学習させることで「どのような特性の地域にどのような施策の組み合わせが関係したか」を発見することを目指します。

特性と施策の重要な組み合わせの発見

※1: WHOは、「この新型コロナウィルスはこれまでのSARS、MERS、インフルエンザのいずれとも異なる独特な特徴を持っている」という声明 を出しています。


今回使うデータ

Wide Learning™ Trial Toolを使うためには、下記のデータが必要ですので、リンク先のファイルをダウンロードしてご利用ください。

感染拡大抑制施策学習用データ: Wide Learning™に学習させるためのデータ(COVID_train.csv)

感染拡大抑制施策予測用データ: Wide Learning™に予測させるためのデータA 未実施から施策を増やした場合(COVID_test_a_increment.csv)

感染拡大抑制施策予測用データ: Wide Learning™に予測させるためのデータB 実際の実施施策を前倒しした場合(COVID_test_b_advance.csv)

以下の表1は、2020年3月25日のアメリカについて、オープンデータから収集した特性と施策実施状況を表にしたものです。世界中の国/地域の感染者数の拡大時期前後についてこのようなデータを集めて、Wide Learning™によって分析を行います。

表1 特性と施策実施状況の一例
データラベル 国_基準日 アメリカ_2020/03/25
説明変数 [特性]地域 北アメリカ地域
[特性]BCG予防接種受診率
[特性]一人当たりGDP 19443ドル超過
[特性]65歳以上人口比 8.5%以上
[特性]平均寿命 78.7歳以下
[特性]喫煙者人口比 14.3%超過
[特性]都市部人口比 55.3%超過
[特性]給与所得者比 76.8%超過
[施策]学校閉鎖後 3週間以降
[施策]集会制限後 2~3週間
[施策]営業休止後 2~3週間
[施策]外出制限後 3週間以降
[施策]国内移動制限後 3週間以降
[施策]交通機関閉鎖後 3週間以降
[施策]公共行事中止後 3週間以降
目的変数 正解ラベル 1

データの詳細

施策に対する説明変数「各施策後2~3週間/3週間以降」については、人がウィルスに感染してから潜伏期間を経て発症、検査をして結果が出るまでを約2週間と考え、施策実施後の1週間以内に感染に影響したか、それ以降に影響したかを判断するための指標として作成しています。

各国/地域の施策実施状況と報告された感染者数、および特性データは、Oxford大学のCovid-19 Government Response Tracker※2)を利用します。また国/地域の特性として、世界銀行のIndicatorsデータ※3)も利用しました。

より詳細なデータの内容や目的変数の作り方については、本稿の末尾に記載する補足説明と、関連論文の情報をご参照ください。

※2Oxford Covid-19 Government Response Tracker (OxCGRT)
※3Indicators - World Bank Open Data

Step1:国/地域ごとのウィルス感染拡大抑制施策と、
結果をデータ化しよう

学習用データのアップロード

学習用データをアップロードすると、そのデータの内容が表の形式で表示されます。1つの行が、ある地域・ある期間に対する、特性と施策実施状況データを表します。

学習用データの統計情報は「1-3. 学習用データの確認」から確認することができます。詳しくは哺乳類判別事例の「統計情報を見よう」を御覧ください。

学習用データのアップロード結果

Step2:国の特性に対する施策の組み合わせを分析

重要な項目の組み合わせを生成

次に、「Step2に進む」というボタンをクリックしてください。(生成には少し時間がかかります)
Wide Learning™は、感染拡大に関係すると判断した項目の組み合わせを選び出し、表示します。
1つの行が1つの組み合わせの情報を表し、一番左の列が、重要な項目の組み合わせを表します。

重要な項目の組み合わせの生成結果

今回の事例紹介では、より重要な組合せの発見にフォーカスするため、Wide Learning™ Trial Toolの制限を外して実行した結果 (通常版) も合わせてご紹介します。この結果は、Trial Tool (組み合わせ数が最大3つに制限) の結果より多くの組み合わせも分析対象としており、入力データの種類・量を増やして、出力が省略されている詳細データも分析に用いています。


特性と施策の効果分析

それでは実際に、Wide Learning™が発見した重要な項目の組み合わせを分析していきましょう。このコロナウィルス施策分析事例では、「どのような特性の地域にどんな施策の組み合わせが感染拡大に関係したか」を発見するため、特性と施策の両方が含まれている組み合わせに注目して分析を行っていきます。例えば、以下の表2に示す組み合わせの例が分析対象です。

表2 分析対象とする組み合わせの例
パターン 組み合わせの種類 組み合わせの出力例
1 1特性と1施策 特性A ∧ 施策X
2 1特性と2施策 特性A ∧ 施策X ∧ 施策Y
3 2特性と1施策 特性A ∧ 特性B ∧ 施策X
4 1特性と3施策 特性A ∧ 施策X ∧ 施策Y ∧ 施策Z
5 2特性と2施策 特性A ∧ 特性B ∧ 施策X ∧ 施策 Y

ハイライトされたデータは、Trial Toolでは得られません。

ここでは最初にシンプルな分析方法として、表2のパターン1~3のように、特性を任意の1つに絞って、どのような施策の組み合わせが感染拡大に関係したかを、施策数毎に段階的に分析していきたいと思います。特性は計16種類ありますが、今回は分析した中から特徴のあったものとして、日本も対象として含まれる都市部人口比が高い国について着目した分析結果をご紹介します。


都市部人口比が高い国における施策の組み合わせを分析

表3 都市部人口比が高い国における組み合わせの例
特性 施策の組み合わせ 長さ POSの
出現数
NEGの
出現数
確信度
都市部人口比
55.3%以上
国内移動制限後2~3週間 *1 2 72 49 0.60
学校閉鎖後2~3週間 2 52 34 0.60
交通機関閉鎖後2~3週間 ∧ 集会制限後2~3週間 *2 3 25 12 0.68
集会制限後2~3週間 ∧ 外出制限後2~3週間 3 28 16 0.64
交通機関閉鎖後2~3週間 ∧ 営業休止後2~3週間 3 31 19 0.62
営業休止後2~3週間 ∧ 外出制限後2~3週間
∧ 公共行事中止後2~3週間
*3 4 16 2 0.89
集会制限後2~3週間 ∧ 営業休止後2~3週間
∧ 国内移動制限後2~3週間
4 21 5 0.81
営業休止後2~3週間 ∧ 公共行事中止後2~3週間
∧ 国内移動制限後2~3週間
4 20 5 0.80
営業休止後2~3週間 ∧ 外出制限後2~3週間
∧ 国内移動制限後2~3週間
4 29 11 0.73

ハイライトされたデータは、Trial Toolでは得られません。

表3にWide Learning™が発見した組み合わせの中から、都市部人口比の特性と施策の組み合わせを抽出し、この条件に合致するPOS(=Positive)とNEG(=Negative)の事例数を示します。この表には、Trial Toolが出力しないデータとして、確信度 (Confidence) を載せています。
これは、学習データからその特性・施策状況に合致した事例の内、POSとなる事例数の割合を示したものです。
例えば、「都市部人口比が55.3%以下、かつ国内移動制限後2~3週間」では、121例の72例がPOSであったため (POS数72 / NEG数 49)、確信度は72 / 121 = 0.60(60%)となります。
また、Trial Toolツールでは長さ3までの組み合わせしか出力されませんが、ここでは通常版を用いると出力可能である長さ4の組み合わせも合わせて表に載せています。

*1:一つの施策のみは「およそ6割」の確信度

それでは表3の中身を見てみましょう。
まず長さ2の組み合わせを見ると、都市部人口比が高い地域では、「国内移動制限後2~3週間」および「学校閉鎖後2~3週間」の場合において、おおよそ6割の確率でコロナウィルス感染拡大が抑制されている事が分かります。
この事から、国内移動制限や学校閉鎖の施策は、都市部人口比が高い地域において、コロナウィルス感染拡大の抑制に有効である可能性があります。

*2:二つの施策を組み合わせると確信度が「6割強」に上昇

続いて長さ3の組み合わせを見ると、都市部人口比が高い地域では、「交通機関閉鎖後2~3週間、かつ集会制限後2~3週間」の組み合わせにおいて、約68%の確率でコロナウィルス感染拡大が抑制されている事が確認できます。
都市部人口比が高い地域で交通機関を閉鎖する場合は、集会制限も合わせて行うとより効果を発揮するかもしれません。

*3:三つ以上の施策の組み合わせだと「9割近い」確信度

最後に通常版で出力される長さ4の組み合わせを見てみましょう。3施策以上実施した場合、確信度が0.8以上の組み合わせがいくつか出力されている事が読み取れます。特に、「営業休止後2~3週間、かつ外出制限後2~3週間、かつ公共行事中止後2~3週間」の実施組み合わせでは、約9割近い確率でコロナウィルス感染拡大が抑制されている事が読み取れます。
都市部人口比が高い地域では、3施策以上を組み合わせて実施する事で、コロナウィルス感染拡大の抑制効果が期待でき、その中でも3施策の場合は上記組み合わせが特に効果が期待できます。


複数の特性と施策の効果分析

このように、特定の特性に着目した分析によって、地域ごとの施策の有効性を発見することができました。次に、高度な分析方法として複数の特性を組み合わせることで発見できる特徴を分析します。この分析でも、通常版のWide Learning™を利用し、入力データも種類・量共に増やしています。

今回は表2のパターン4~5に相当する組み合わせに対し、同じ特性ペアを持つものをグループ化して、各グループ内の組み合わせが拡大抑制に関係した (1:POS) か、拡大抑制が防げなかった状況に関係したか (0:NEG) を表す正解ラベルの数を見比べます。

ここで、ほとんどの組み合わせがNEGで、少数のPOSの組み合わせだけが見つかるような特性グループからは、 該当する特性の地域では、ほとんどの施策組み合わせは感染拡大を抑制できないが、 特定の施策の組み合わせでは他の組み合わせより効果を見いだせる と言えます。

WideLearningがピックアップした重要な組み合わせ

表4「人口密度低、糖病病率高」地域の感染拡大抑制に関係した組み合わせ
特性 施策の組み合わせ POSの
出現数
NEGの
出現数
確信度 国数
人口密度<=66.9/km2以下
∧ 糖尿病率>7.1%超過
集会制限無し ∧ 公共行事中止後2~3週間 15 2 0.882 10
外出制限無し ∧ 交通機関閉鎖_未実施
∧ 公共行事中止後2~3週間
14 2 0.875 10

663件の組み合わせから「6つ」の有効な組み合わせを見つけ出す

例えば「人口密度低、糖尿病率高」という特性を持つグループでは、663件の組み合わせがWide Learning™によって抽出されますが、感染拡大抑制に役立たないNEGの要因組み合わせがほとんどです。しかし6つの組み合わせのみがPOSを示し、感染拡大の抑制に関係したと分類されています。このPOSの組み合わせから重複する意味合いの要素を省略し、2つの代表例を表4に示します (該当する国の数は10か国(※4))。
これらの組み合わせからは、人口密度が低く糖尿病率が高い地域では、集会制限や外出制限、交通機関閉鎖は行わずに、公共行事を中止した方が効果が期待できるといったことが読み取れます。

このように、Wide Learning™が膨大な要因の組み合わせを網羅的にチェックして、分類に役立つものを絞り込んでくれるため、特定のグループのPOS/NEGの偏りを容易に計算可能になり、特徴ある要因の組み合わせを発見しやすくなるのです。

※4:ブラジル、カナダ、チリ、コロンビア、イラン、パナマ、サウジアラビア、南アフリカ共和国、アメリカの9か国がPOSに該当し、メキシコがNEGに該当


要因分析のまとめ

このようにWide Learning™が「感染拡大を抑制できるかの判断に役立つ要因の組み合わせ」を網羅的かつ高速に抽出するため、抽出結果の確信度やPOS/NEGの偏りを分析することで、さまざまな国/地域の特性に対して、どのような施策が役に立つかを調べることができました。

今回シンプルな分析で取り上げた実例からは、都市部比率が高い日本のような地域では、感染者数が増えてきた時には、国内移動制限や学校閉鎖、交通機関と集会制限の組み合わせ、営業休止と国内移動制限と公共行事中止の組み合わせなどが効果を発揮する可能性が高いと言えそうです。

今回は「感染拡大率が下がる時期」をPOSとして、感染拡大期に有効な要因を分析しましたが、「感染者数が低いままの時期」をPOSとして分析すれば、感染を抑制できている時にそれを維持するための要因、できない要因を見つけることができるでしょう。

このようにWide Learning™は、ヒントが少ない社会的な課題に対しても、様々な要因について幅広くかつ素早く分析を行い、有効な知見を発見することができます。

Step3〜5:見つけ出した要因の組み合わせで、
異なる地域の状況を予測しよう

Trial Toolを用いて発見した重要な項目の組み合わせから影響が大きいものをAIに学習させて、新しい国/地域の特性と施策実施状況データに対して感染拡大抑制ができるか否かを予測することができます。

予測用データをWide Learning™ Trial Toolに与えて、異なる地域・時期で感染拡大の抑制が可能かを予測してみましょう。Step2「重要な項目の組み合わせを確認しよう!」の画面にある、「Step3に進む」のボタンを押してください。

重要な組み合わせに重みを付ける


Step3:組み合わせごとの重要さの確認

次の画面では、先程確認した重要な項目の組み合わせに対してどのくらいの大きさの重みがついているかを見ることができます。ここで「重み」とは、その項目の組み合わせが、感染拡大抑制に関係したかどうかを判別するためにどのくらい重要かを数値で表したものです。POSの組み合わせは拡大抑制に関係する、NEGの組み合わせは感染拡大を防げない状況に関係する、と判断された結果です。


Step4、5:新たな地域・期間データについて、感染が拡大するかを予測

この結果を用いて、新しい地域や期間のデータを与えて、それぞれのケースで感染拡大を防げるか否かを予測してみましょう。
ここでは、二つの予測用データを用意しました。

  • COVID_test_a_increment.csv
  • COVID_test_b_advance.csv
ドラッグアンドドロップで、Wide Learning™ Trial Toolに予測用データをアップロードしてください。

テストデータA:未実施から施策を増やした場合の効果の推定(インド)

未実施から施策を増やした場合を仮定したデータ(COVID_test_a_increment.csv)をアップロードした状態を以下に示します。
このデータは、インドにおける下記の施策実施状況を表したデータです。

  • データ1:施策未実施の場合
  • データ2:公共行事中止を実施した場合
  • データ3:営業休止を実施した場合
  • データ4:営業休止に加え、集会制限と公共行事中止を行った場合
  • データ5:データ4の営業休止と公共行事中止を学校閉鎖と交通機関閉鎖に置き換えた場合

アップロードした結果を確認し、「Step5に進む」ボタンを押してみましょう。
「5.予測結果を確認しよう!」では、予測データにある地域・時期に対する結果やスコアを確認することができます。
スコアが0.5を超えたケースが、POS(感染拡大を抑制)として予測されたものです。 予測データの内一つを選択すると、そのデータに該当する重要な項目の組み合わせと、その重要度 (重み) を確認することができます。

テストAで用意した5つのデータからは、以下の結果が確認できます。

  • データ1:施策未実施だとNEG判定
  • データ2:公共行事中止のみ実施してもスコアに変動無し
  • データ3:営業休止を実施するとスコア上昇
  • データ4:営業休止に集会制限と公共行事中止を加えるとPOS判定になる
  • データ5:営業休止と公共行事中止を学校閉鎖と交通機関閉鎖に置き換えるとNEG判定になる

それぞれの判定結果を、該当する項目の組み合わせと共に確認してみましょう。

データ1 (施策未実施) と2 (公共行事中止のみ) は、POS側に該当する重要な項目の組み合わせがありません。スコアも0.394と、0.5を下回りNEG判定となっています。

これに対してデータ3 (営業休止のみ) は、POS側にインドにおける特性と営業休止が関係するいくつかの組み合わせが出現し、スコアも0.427まで上がっています。まだNEG判定には変わりありませんが、これまでの二つのデータに対して感染拡大抑制の可能性が高くなっているとWide Learning™が判断していることを示します。

データ4 (営業休止に加え、集会制限と公共行事中止を実施) では、 集会制限と関係した組み合わせがPOS側に新たに出現し、スコアも0.5を超えてPOS判定に変わっています。一方で、公共行事中止に関係する組み合わせは出力されていません。

最後にデータ5 (データ4に対して営業休止と公共行事中止を学校閉鎖と交通機関閉鎖に置き換え) では、同じ3施策の実施でもスコアが0.5を越えずNEG判定となっています。特に学校閉鎖に関しては、NEG側にのみ組み合わせが現れていることが分かります。 このように、特定の施策を組み合わせて実施している状況を仮定したデータを元に、Wide Learning™で感染拡大の抑制可否を予測することで、各国・地域に合った施策の組み合わせを探すことができます。


テストデータB:実際の実施施策を前倒しした場合の効果の推定(アメリカ)

次に、実際とは異なる日時に施策を実施した場合を仮定したデータ(COVID_test_b_advance.csv)の分析の例をご紹介します。
各国・地域は、それぞれの事情から感染対策となる施策を選択し、実行日を決定していますが、後知恵として仮にいずれかの (または全ての) 施策を前倒ししたと仮定した時に、どれだけ早く感染拡大の山を抑えることができるか (=感染拡大時期を短くできるか、早く定常期にできるか) を予測してみます。

いくつもの仮定の手段が考えられますが、ここでは「各施策を実際の実施日から一定期間前倒しするコストは同等」と考え、7つの施策をそれぞれ一定期間だけ前倒しする/しないの2通りを取りうるものとし、全127通り (2の7乗 – 1) のテストデータを作成しました。このデータからの感染拡大抑制可否の予測結果を実際の施策日での結果と比較しました。

上に示すのが、アメリカにおける感染者数の抑制可否のラベル (正解ラベル: グラフ黒実線・表1行目) と、実際の施策実施日によるデータに対する予測結果 (スコア:グラフ薄緑線、予測結果:表2行目) と、これに対して施策を1週間前倒しした仮定データの内最も早く感染拡大を抑制できると予測されたパターンの結果 (スコア:グラフ濃緑線、予測結果:表3行目) の関係です。
この図の3/5および3/9のように、「実際に感染拡大を抑制できなかった (NEG)」かつ「実際の施策実施状況でも抑制できない (NEG) と予測された」時期について、「前倒ししたことによって抑制できる (POS) と予測された」時期が最も多くなるものを最善例として選別しました。

特に、前倒しする施策が最も少なく済んだ「学校閉鎖のみ実施を1週間早くしたケース」の3/5と3/9のデータを、Trial Tool用の予測データ (COVID_test_b_advance.csv) として用意しています。データ1、2は比較のための「実際の実施日時のままのデータ」、データ3、4が「学校閉鎖の実施を1週間早くしたデータ」になります。

これまでと同じように、「Step5に進む」ボタンを押してこのデータに対して感染拡大の抑制可否を予測してみましょう。

左側の表に、「各データがPOS/NEGのどちらに判定されたか」が、スコアと共に表示され、各データをクリックして選択することで該当する重要な項目の組み合わせを確認することができます。

施策前倒しで、感染拡大抑制に繋がる?

この該当する組み合わせの相違から、なぜアメリカで学校閉鎖を1週間前倒しすることによって3/5の感染拡大抑制の予測がNEGからPOSに変わったのかを分析してみます。重要な項目の組み合わせの差分として、学校閉鎖の前倒しによって新たに該当したもの、該当しなくなったものを以下の表に示します。

新たに該当した重要な項目の組み合わせ
要因の組み合わせ 重要度(重み)
北アメリカ大陸 ∧ 喫煙者多
∧ 学校閉鎖後_3週間以降
0.4817
北アメリカ大陸 ∧ 平均寿命低
∧ 学校閉鎖後_3週間以降
0.4817
該当しなくなった重要な項目の組み合わせ
要因の組み合わせ 重要度(重み)
一人あたりGDP高
∧ 学校閉鎖後_2~3週間
0.6076
都市部人口多い
∧ 学校閉鎖後_2~3週間
0.3683
65歳以上人口多
∧ 学校閉鎖後_2~3週間
0.1785
給与所得者多
∧ 学校閉鎖後_2~3週間
-0.0709
一人あたりGDP高
∧ 平均寿命低
∧ 学校閉鎖後_2~3週間
-0.3871
北アメリカ大陸 ∧ 喫煙者多
∧ 学校閉鎖後_2~3週間
-0.5313
北アメリカ大陸 ∧ 平均寿命低
∧ 学校閉鎖後_2~3週間
-0.5313

それぞれ「学校閉鎖に関わる組み合わせ」が抽出されています。特に、「北米大陸で喫煙者が多い」および「北米大陸で平均寿命が低い」地域では、学校閉鎖後2~3週間の評価と3週間以降の評価が反転しており (-0.5程度から+0.5程度へ)、他の重要度(重み)の変化より大きいことが読み取れます。

ここから、今回用意した学習データからは、アメリカでは学校閉鎖後2~3週間より3週間以降の効果が高いと推定され、それは北米大陸での喫煙者多地域/平均寿命低地域での事例を根拠にしていることが分かりました。

このように、学習によって重要な特性や施策の組み合わせを発見した結果を用いて、新しい地域や時期の感染拡大の様子を予測することができます。


参考

この分析と関連した研究成果を、下記の学会に発表しています。

タイトル:AIによるCOVID-19感染抑制策の効果推定
Effectiveness Estimation of Interventions against COVID-19 Using AI
発表先:経営情報学会 2020年 全国研究発表大会 (11月7日)

タイトル:国/特性によるCOVID-19感染拡大抑制施策の効果に関する仮説提示
Hypotheses for impact of non-pharmaceutical interventions against COVID-19 with respect to country/region features
発表先:経営課題にAIを!ビジネス・インフォマティクス研究会 第16回研究会@オンライン開催 (8月29日)


免責事項

公的なデータに基づいて実際の行政政策と感染拡大抑制効果について分析を行っておりますが、医学的な監修の元で実施した分析ではありません。
この結果は、分析ツールWide Learning™の有効性の確認が目的であり、あくまで社会的な課題と施策の関係分析の一例としてのみご参照いただきますよう、お願いいたします。


データ詳細

通常版を使って分析したデータの種類は以下の通りです。

特性
地域 (※5 BCG予防接種受診率 一人当たりGDP (米ドル)
65歳以上人口比 糖尿病罹患率 極度貧困率 (※6
外国からの旅行者数 平均寿命 喫煙者人口比
都市部人口比 給与所得者比 衛生環境人口比
清潔飲料水人口比 手洗い設備人口比 人口千人当たり病床数
人口千人当たり医師数 人口密度  

ハイライトされたデータは、Trial Toolでは得られません。

施策
学校閉鎖 営業休止 集会制限
外出制限
(不要不急の外出に対する制限)
公共行事中止 国内移動制限
交通機関閉鎖  

※5:東アジア・太平洋地域、ヨーロッパ・中央アジア地域、北アメリカ地域、南アメリカ・カリブ地域、中東・北アフリカ地域、南アジア地域、サハラ以南アフリカ地域の7地域 (世界銀行の分類による)
※6:1日当たりの収入が1.9米ドル以下の人口の割合


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